大学構内での全面禁煙について
先日の講義の中でちょろっと先生の口から出た「2019年7月1日をもって本校は全面禁煙となります。」でSNSは大騒ぎになりました。
「オリンピックだからって全面禁煙はないだろう。」
「この学校はどうなっているんだ。」
多くの喫煙者から批判の声が相次いでいます。
「苦手なたばこのにおいがなくなってクリーンな空気になるのでむしろ歓迎。」
賛同の声も上がっています。
どちらにせよこの大学構内が全面禁煙になることは喫煙者、非喫煙者にとっても大きな変化をもたらすことになります。
ただ、この出来事オカザキにはいまいち納得ができない点が多くあったので、ちょっと調べてみました。
せっかく法学部で時間もたっぷりあるのでどういう経緯があってこの大学構内全面禁煙になったのかを解き明かしていきます。
健康増進法改正
平成30年7月25日 官報にて健康増進法の一部を改正する法律の公布がありました。この健康増進法の改正が大学構内の全面禁煙に直接かかわる部分になります。
第六章 受動喫煙防止
(国及び地方公共団体の責務)
第二十五条
国及び地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、受動喫煙の防止に関する意識の啓発、受動喫煙の防止に必要な環境の整備その他の受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない。
(関係者の協力)
第二十五条の二
国、都道府県、市町村、多数の者が利用する施設(敷地を含む。次条第二項及び 第二十五条の五において同じ。 ) を管理する者その他の関係者は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙を防止するための措置の総合的かつ効果的な推進を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。
〔中略〕
イ
学校、病院、児童福祉施設その他の受動喫煙により健康を損なうおそれが高い者が主として利用する施設として政令で定めるもの
平成30年7月25日(号外 第163号)より
① | 平成30年7月25日 | (技術的な改正事項) |
② | 平成30年7月25日から6か月以内の政令で定める日 | 国及び地方公共団体等の責務 |
③ | 平成30年7月25日から1年6か月以内の政令で定める日 | 学校・病院・児童福祉施設等、行政機関について義務化 |
④ | 平成32(2020)年4月1日 | 全面施行 |
上記の表③の中に大学が含まれており、平成30年7月1日の大学構内全面禁煙は前倒しでの措置と考えられます。
また、罰則の規定もあり、喫煙した個人に30万円以下、禁煙場所に灰皿などの喫煙器具や設備を設けるなどした施設管理者に50万円以下の過料が課されることになります。
ここまでが法律が事実として存在することまでは説明ができましたが、そもそもなぜこのような法改正がなされたのかについてですが、ここに2020年東京オリンピックが深く関係しています。
皆さんご存知の通り、2020年に東京でオリンピックが開催されます。オリンピック開催国では、競技場の建設や周辺の交通整備、テロ対策など様々な面での動きが活発になります。その中にもたばこに関する動きがあります。
1 オリンピックでの喫煙規制
① IOCによる禁煙方針の採択
・1988 年:禁煙方針を採択
・会場の禁煙化とタバコ産業からのスポンサーシップ拒否
→1988 年カルガリー大会以降、会場の内外が禁煙化
② WHOとIOCによる合意文書への調印
・2010 年7月:たばこのないオリンピックを目指す合意文書への調印
<合意内容>
すべての人々に運動とスポーツを奨励し、タバコのないオリンピ
ックを実現し、子どもの肥満を予防するために健康的なライフスタ
イルを奨励することを共同で行う合意に達した。
→同時期から、オリンピックは、会場だけではなくレストラン等を
含む屋内施設が全面禁煙の国や都市で行われることが慣例になる。
(罰則付きの法または条例が整備)
◇オリンピック開催都市の受動喫煙防止の取組み状況
開催年 開催都市 受動喫煙防止法等
2020 年 東京 なし(2016.4 現在)
2016 年 リオデジャネイロ 2009 年施行(州法)
2014 年 ソチ 2013 年施行(法)
2012 年 ロンドン 2007 年(法)
2010 年 バンクーバー 2008 年施行(州法)
2008 年 北京 2008 年施行(市条例)
2006 年 トリノ 2005 年施行(法)
2004 年 アテネ 2000 年施行(法)
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/cz6/cnt/f6955/documents/913653.pdf より
上記はオリンピック開催国の禁煙規制と実際のオリンピック開催国の法整備の年表がまとめられています。
ここからわかることは、
オリンピック開催国は開催の条件として禁煙に努めなければならない
ということです。
それに伴って日本でも法整備がなされたのであって、これには学校への抗議で何とかなるようなレベルではない規模での動きであることが分かります。
実は受動喫煙への配慮も義務である。
同じく平成30年7月25日(号外 第163号)にはこのような条文があります。
(喫煙をする際の配慮義務等)
第二十五条の三何人も、喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない。
2多数の者が利用する施設を管理する者は、喫煙をすることができる場所を定めようとするときは、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならない。
平成30年7月25日(号外 第163号)より
上記の条文も法改正で新たに加えられたものであり、喫煙する際には望まない受動喫煙をさせないための義務も付け加えられたということになります。
終わりに
正論で固めてきやがっていやな奴だなオカザキってやつは、と思われていそうですごく不安な気持ちで、ここまでまとめ上げてきました。
今回の法改正は確かにオリンピック開催に伴っての改正であり、気持ちよく思わない気持ちもわかります。分煙さえできていればいいじゃないかそこまで取り締まる方が喫煙者の人権軽視ではないのか?というのも一理ある意見です。
しかしここまで大きく法改正がされるのには、やはり受動喫煙のリスクののほうが喫煙自由であることよりも大きく評価されている背景がある以上、喫煙者の自由を訴え続けるのは、難しいところがあるようです。
あえて、私の意見はここでは述べません。それだけ喫煙者、非喫煙者、両者の願望がぶつかりあう泥沼の論争は、この法改正の事実の前では泥沼の論争でしかないからです。
つたない文ではございましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございます。